論文内容の要旨

【題名】
Organization of backward projections from area TE of the macaque inferotemporal corex
(日本サル下部側頭葉皮質TE野からの逆行性結合の解剖学的構造)

鈴木 航 博士(理学)

論文審査委員
(主査)教授 藤田一郎
(副査)教授 大澤五住、教授 佐藤宏道


 日本サル下部側頭葉皮質TE野からTEO野への逆行性結合の解剖学的構造を、順行性トレーサーPHA-Lを用いて調べた。本研究の目的は視覚連合野TEからの逆行性結合の構造を初期視覚領域における逆行性結合、TEOからTEへの順行性結合と比較することである。
 3頭の日本サルのTEの中の単一部位にPHA-Lを注入し、標識軸索の分布を下部側頭葉と後頭葉の2次元展開図上に示した。標識軸索はTEOとPITd(上側頭溝下壁のTEOに隣接する領野)に多く分布し、またV1、V2、V4に少量分布していた。TEOとPITdの標識軸索は皮質表面に沿って4mm以上にわたり連続的に分布していた。TEOからTEへの順行性結合を同じ方法で直接比較するために、以前TEOにPHA-Lを注入した二頭のサルの下部側頭葉を解析しなおした(Saleem et al., 1993)。この順行性結合では標識軸索はTEからTEOに逆行性に投射する標識軸索の分布よりもTEの限局した領域に観察された。
 連続切片から9つの単一標識軸索を再構成した。これらの軸索は複数のarborを持ち、多様な層分布と複雑な分岐様式を示した。再構成した単一軸索には、1層から3層まで分布するarborを持つもの(n=4)、1層のみに分布するarborを持つもの(n=1)、5層と6層に分布するarborを持つもの(n=2)、1層から3層までと5層と6層に分布するarborを持つもの(n=2)があった。初期視覚領域における逆行性結合で見られるような1層で水平方向に広がる軸索が多く見られる傾向はなかった。個々のarborの大きさ(1.56±1.24mm)はTEOからTEへの順行性に投射する単一軸索のarborの大きさ(<0.6mm)よりも大きかった。
 これらのことから、TEからの逆行性結合はTEO/PITdの広い領域に結合し、さらに多様な神経終末の層分布を持つと結論する。初期視覚領域の逆行性結合には見られない層分布の多様性はTEからの逆行性結合が興奮性の調節だけでなく情報処理のより詳細にかかわる役割を持つことを示唆する。