伊藤正男編「思考と脳」197-216(分担執筆)紀伊国屋

第七章 聴覚情報による外界の認知

 

藤田一郎

 

 私が皆さんに話しかけているとき、皆さんの脳は二つの仕事をしています。一つは、「私の声がどこから聞こえるか」を知ることです。多くの動物の場合、この二つの仕事、すなわち、音源の位置と音の内容を知ることがうまくできなければ、的確に獲物を捕らえたり、交尾相手を見つけたり、捕獲者から逃げたりすることができず、生きのびることができません。このようなきびしい自然淘汰を長い年月経ることにより、ある種の動物はとくにすぐれた聴覚能力を進化させてきました。
 今日はそのような例としてフクロウとコウモリをとりあげ、脳がどのようにして音の方向や内容を知るのかをお話ししたいと思います。その際、聴覚情報処理についてわかっていることを浅く広くお話しするのではなく、いくつかの局面に話のポイントをしぼり、そこから脳に関する原理的な問題を考えるよう心がけていきたいと思います。