Tanaka S, Fujita I (2015) Computation of object size in visual cortical area V4 as a neural basis for size constancy. J Neurosci, 35: 12033-12046.

向こうから歩いてくる人を見ているとき、その人の像は網膜の上でだんだん大きくなっている。にもかかわらず、その人が大きくなっていくようには感じない。この現象は大きさ恒常性と呼ばれる。ものの大きさを知覚するときに、私たちの脳が物体の網膜像の大きさに加えて距離も考慮に入れていることをこの現象は意味している。

たとえば、左図は何の変哲もない状景だが、白線の上にたっている人物の像をコピーして奥に貼り付けると(中央図)、この人物は巨人のように見える。一方、手前に貼り付けると(右図)、この人物は小人のように見える。これは、この写真に含まれる線遠近やきめの勾配、陰影といった手がかりを使って私たちの脳が距離を推定し、その情報を加味して大きさを知覚しているからだ。物体までの距離が変わった時に起きるはずの網膜像の大きさ変化を無視して画像を作ったため、大きさ恒常性が起きず、異常な大きさに感じるのである。

像の大きさと距離の両方が大きさの知覚を決めていることは、2000年も前にプトレマイオスも気づいていた。だけど、網膜像の大きさ情報と距離情報が脳の中のどこで、どのように相互に作用するのかはずっと不明のままだった。大学院生だった田中慎吾君(現、玉川大学)と一緒に行った研究で、V4野と呼ばれる視覚野の神経細胞が、この知覚現象を説明する特性を持つことを示した。今日、Journal of Neuroscience誌のオンラインに載った。10年来の仕事なので、率直に言って、うれしいというよりほっとした。(編集者のコメント欄This week in the Journalの対象論文になっている。こちら)(大学からの広報はこちら

Tanaka S, Fujita I (2015) Computation of object size in visual cortical area V4 as a neural basis for size constancy. J Neurosci, 35: 12033-12046.

やっぱり嬉しいのかな。ここで皆さんに紹介したいと思うくらいなんだから。