大阪大学大学院 生命機能研究科 認知脳科学研究室 生物学、脳研究、脳と心、意識、認知脳科学、神経科学、行動学、視覚、錯覚、脳の発達
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正念場を迎えた霊長類実験研究

2006-01-01
NBR(「ニホンザル」バイオリソースプロジェクト) News letter Vol.3 No.2 (2007)
大阪大学大学院生命機能研究科 藤田一郎

サルを用いた実験研究を行っているわれわれを取り巻く研究環境はこの数年で激変した。個々の事態は突然やってきたわけでも、予告なしにやってきたわけでもなく、われわれは、予見し、準備をし、対応を取りつつ過ごしてきたのだが、ふりかえってみると、5年前、10年前とは、まったく異なった状況におかれている。サルたちもまた、皮下にICチップを埋め込まれるようになり、さぞ驚いているだろう。

この間に起きたできごとのうちですばらしいことは、もちろん、この「ニホンザル」バイオリソースプロジェクト(以下、NBR)が立ちあがったことである。最大目標であるニホンザルの繁殖もほぼ計画通りに進み、少数ながら最初の供給が始まった。ニホンザルの繁殖という主目標だけでなく、この5年間の活動により、サルを用いた実験研究者の間の共同体制や情報交換が強まり、その上に、生態学研究者、実験動物学者、医師、獣医師、行政官、そして、研究者ではない一般の方々との継続的交流を行う基盤ができた。このニュースレターは、毎号、このような広い分野からの質の高い学際的な情報を掲載しており、ここから得た貴重な情報は、サルを用いた実験研究を行っている者の視野を広げ、専門的知識を深めるのに大きな貢献をしている。ここにいたるまで、多くの困難があり、膨大な打ち合わせ、調査、事務作業、関係諸方面との折衝があった。私もこのプロジェクトの委員の末席に連なっていたが、伊佐委員長、泰羅副委員長を始めとするNBR運営委員会委員およびこのプロジェクトに直接関わる方々の努力と、周辺からいただいた応援には、一研究者の立場から心から感謝する。

しかし、サルの繁殖という時間と費用のかかる作業を進めている間に、世の中の状況はより速いスピードで動き、その結果、現在では実験動物としてのサルの入手は、5年前と比べて格段に難しくなった。サルの供給ルートはせばまり、サルの価格は高騰し、サルの移動は困難を極め、5年前であれば可能であった研究のいくつかは、今や行うことは不可能に近くなりつつある。

NBRが研究者の需要に見合うサルを供給し、現状の困難を払拭するようになるまでには、まだだいぶ時間がかかるだろう。また、NBRの組織をどのような形で安定した運営形態に乗せるかについて、これから、多くの議論と努力が必要である。NBRがそのフルパワーを出し、当初目標を果たすことができるようになる時まで、われわれは、今の苦境を何とかしのいで、研究レベルを質的にも量的にも維持していかなくてはならない。

研究者になることをめざし、希望に燃えて大学、大学院に進んでくる若者たちと出会うたびに、彼らが誇りと自信を持って勉学と研究に打ち込める研究環境と社会環境を保つ重要さを痛感する。適切で安定した実験動物の供給ルートの確立はその大前提である。時宜を逸すれば、若者は離れ、学問は途絶える。

われわれは、正念場を迎えている。


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