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シンポジウム「脳科学とどうつきあうか」

@南山大学社会倫理研究所

大阪大学 基礎工学部システム科学科
生物工学コース 4年
井上 滋智
2010/12/12初出

はじめに

 12/11に南山大学社会倫理研究所で行われた、 脳科学の迷信に関するシンポジウム「脳科学とどうつきあうか」の模様をお伝えします。

 

講演

 南山大学の鈴木貴之先生は、擬似脳科学と擬似科学の違いに焦点をあてて論を進め、 「擬似脳科学の問題点」や「専門家・一般の人々が持つべき認識」について話されました。 特に脳科学者には、標準的知識の提示と個別の問題への対応が求められました。 例として、北米神経科学学会からBrain Facts という一般向けに研究成果を示した冊子が配られているように、 日本で一般の人が脳について知りたければ、 まずここを見たらよいというものを社会的信用の高い機関が情報提供する必要があると提案しました。

 信州大学の菊池聡先生は、人がダマされる仕組みを、 「脳科学に限らず疑似科学の主張を一般の人々がなぜ信じてしまうのか」という演題で話されました。 衝撃的だったのは、最初に、「なぜ人はあっさり信じてしまうのか」ではなく、 むしろ「どうしてダマされない人がいるのか?」という視点をもつべきだとお話を始めたことです。 なぜなら、「人は基本的にダマされるように出来ているから」です。 「確証バイアス」・「錯誤相関」・「実体験による確証」の三点を通して、 人は思い込み、そしてその思い込みを強固にします。 しかし、これらは人間にとって必要なシステムで、 思い込みがあるからこそ日々の出来事に不必要に検証を行わずにすむのです。 一方で、科学は反証主義であり非人間的です。 だから、一般の人が疑似科学に臨む際には、 少し非人間的になり反証を求める思考が必要だと提案されました。

 大阪大学の藤田一郎先生は脳科学の中にいる立場から、脳科学の迷信に関する懸念と、 それを検証し発信する使命を講演されました。例えば、ある程度研究を犠牲にしていること、 テレビ局で話した際には編集権が先方にあること、 好意的な一般の人でもテレビの内容を聞いて「脳科学は迷信だらけ」という誤った伝聞が起きうること、 そして、落とし穴に弱者がはまらないような活動を脳研究の現場にいるものがやらなくてはいけないと締めくくりました。

 

質疑応答・議論

 各先生の講演の後に、聴衆との質疑応答・議論の場が設けられました。 この中で「研究者と一般の隔たりの大きさ」が印象的でした。特に 「科学者でない一般の人が疑似科学と科学とを判断することができるか?」が最大の争点でした。
 鈴木先生は講演の中で、「他の擬似科学と違って、擬似脳科学は真の脳科学と連続性があり」 この点が区別を難しくしているという意見を出されました。 科学の中には信頼できる事実とグレーゾーン、さらには荒唐無稽というように連続性があり、 境目が不確定だという意見です。
 これに対して、藤田先生は「疑似科学と真の科学とは、はっきりと区別ができる」と強く異論を唱えました。 菊池先生は、「疑似科学VS. 科学という構造ではなく、真の科学者と疑似科学者がいると捉えるべきだ」と述べました。
 また鈴木先生は「科学の方法論を理解することが重要」と発言しており、 フロアから「その理解することのハードルはないのか?」という質問がありました。 鈴木先生は疑似科学そのものを教材としており、 また菊池先生はクリティカルシンキング(じぶんで批判的に考える)を教育に取りこんでいるようです。 藤田先生は、このホームページの作成を学生と共に行うということで、教育に生かしています。

 

感想

 シンポジウムに参加するまで私は、脳の迷信・擬似脳科学の検証について一般からの要請がどれくらいあるのか、 実感が湧いていませんでした。しかし今回のシンポジウムの参加者が60人を超え、 社会科学では疑似科学が大きな研究対象となっています。今回を通して私は、自然科学内にいる人間として、 よりこの問題にケースバイケースで真摯に向き合い取り組まなくてはいけないと思いました。

 


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