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ゲイ脳は存在するのか?

大阪大学 基礎工学部システム科学科
生物工学コース 2年
白石 義宏
2007/03/00初出

はじめに

みなさんは、男の人と女の人、どちらが好きですか?

大半の人は自分と異なった性、つまり異性が好きと答えるでしょうが、世の中には同性の人が好きと答える人もいますよね。そういった人達、最近ではテレビ等でもよく見るようになりましたが、どうして好む性が違うのか‥‥?

「脳が違うから。」

という話を聞いたことありますか?
“同性愛者の脳”、つまり“ゲイ脳”というものが存在するというのです。
今回こういう噂を耳にしたので調べてみました。

ゲイとは

ゲイとは具体的にはどういう人のことを指すのでしょう。

日本では、主に 「ゲイ=男性同性愛者」 として使われているようですね。
ですが「同性愛者」といっても、性同一性障害者の方々のように、自分を体と反対の性と考えている場合もあれば、 自分を男性と認識して男らしい格好をしているにもかかわらず、同性を愛する人もいるようで、いくつか種類があるようです。

人間総合科学大学の新井康充教授によると、これは性別に対する観点として
     @解剖学的性(身体の性)
     Aジェンダーアイデンティティー(自意識の性)
     B性的指向(性的好み)
の3種類があるからだそうです。
Aジェンダーアイデンティティとは、「自分は男(あるいは女)である」と意識することであり、 また「男(女)として暮らすのがふさわしい、しっくりくる」と感じる(意識する)ことです。
なるほど、AとBは必ずしも一致するわけではないのですね。

ゲイ脳について

さて、ゲイ脳というものは存在するのでしょうか。
男女間で、脳の構造に差があるということは知られていますが、果たして同性愛者と異性愛者の間にも差はあるのでしょうか。
これについて調べてみると‥‥

1.INAH−3
アメリカのSalk研究所のLeVay S.教授によると、脳の一部の“視床下部”という部位で差があるという報告が出ています。
視床下部は、以前から性衝動と関係があるとして知られていた部位で、この視床下部の、 “視床下部前間質核(The Interstitial Nuclei of the Anterior Hypothalamus)の第3核”(略:INAH−3)大きさに男女差があり、  男性 > 女性 となっているそうです。

ところが、同性愛男性と異性愛男性とでこの部分を比較してみると、 異性愛男性 > 同性愛男性 となっていて、 同性愛男性のINAH−3は女性のそれと近い、もしくは女性より小さくなっているという。
つまり、まとめると
異性愛男性 > 女性 ≧ 同性愛男性
ということです。
同性愛男性の脳に差が見られるのは驚きです。
この同性愛男性というのは、自意識と関係なく、B性的指向が男性に向けられる人ということです。
なるほど、このINAH−3は性的指向となにか関係があるようですね。

2.BNST
他にも、オランダ脳科学研究所のZhou JN教授らによると、視床下部の“the Bed Nucleus of the Stria Terminalis ”(略:BNST) という部分においても、同性愛者の人には特徴があるそうです。
この部分でも男女間で差があって、男性の方が女性より約1.4倍大きいということが分かっています。ですが、性同一性障害の男性のBNSTは女性のBNSTとほぼ同じ大きさであるという報告が出ています。
また、この検討に用いられた6名のB性的指向は、女性に向けられるものが3名、男性にが2名、両性にが1名と様々であり、更に同性愛男性と異性愛男性では、BNSTの大きさに差がなかったそうです。
つまり、BNSTにおいては
男性 > 女性 ≒ 性同一性障害の男性

同性愛男性 ≠ 異性愛男性
ということです。
このことから考えると、BNSTはB性的指向と関係なくAジェンダーアイデンティティと関係があると考えられますね。

ゲイ脳になるわけ

これまで、ゲイ脳について見てきましたが、ではそもそもどうしてそういった違いが出るのでしょう。同性愛だから脳が変わるのでしょうか?

アメリカのマウントサイナイ医科大学のByne W教授によると、アカゲザルのINAH−3においても性差が確認されていて、それは胎生期の性ホルモン(アンドロゲン) の量によって決まるという報告が出ています。
また、BNSTもラット等の実験動物においては、生まれる前の性ホルモンの量に依存しているということが分かっています。
これらが、ヒトにも当てはまるかはまだはっきり分かってはいませんが、新井康充教授によれば、ヒトのBNSTは 成体になってからはホルモン環境の影響は受けないとのことなので、ヒトの脳も生まれる前の性ホルモンのバランスによって決まっている可能性はあります。

結論

今回の調査から、「“ゲイ脳”は存在するのか?」という疑問に対して、「存在する。」と答えていいようです。
ただ、今回挙げた報告の中にはまだ追試がされていないものもあるので、わずかなケースで結論を出すのは少々危険といえます。
ですが、AジェンダーアイデンティティやB性的指向の決定に、少なからず脳の構造が関係していることも事実でしょう。
また最後に述べたように、ゲイ脳が形成されるには先天的な要素も少なからずあるということを考えると、もちろん一概には言えないのですが、同性愛は本人が選択的に望んでいるわけではないと言えるでしょう。
もし今までに、好みで同性愛を選んでいると思っていた方がいましたら、このことから同性愛の人々への正しい理解をして欲しいと思います。


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