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DHA:さかなを食べると頭は良くなるの?

大阪大学 基礎工学部システム科学科
生物工学コース 2年
古高 潤一
2007/02/27初出
2007/03/07改訂

はじめに

「サカナ、サカナ、サカナ〜。サカナ〜をたべ〜ると〜」
数年前によく聞いた歌の中に魚を食べると頭が良くなるというものがありました。
その根拠は、魚にはDHAが多く含まれているからと言われていましたが、DHAにそんな効果が本当にあるのでしょうか?

DHAとは

まず、DHAとはどんなものか見てみましょう。

ドコサヘキサエン酸( -さん、Docosahexaenoic acid、略称 DHA )は、不飽和脂肪酸のひとつ。
6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸(22:6) の総称であるが、通常は生体にとって 重要な4, 7, 10, 13, 16, 19 位に全てシス型の二重結合をもつ、オメガ3脂肪酸に分類される化合物を指す。 魚油に多く含まれ、摂取することで「健康になる」または「頭がよくなる」としてサプリメントや菓子などに添加されている。(Wikipediaより)

カルボン酸とは炭素鎖の端にカルボキシル基(COOH)がついた有機化合物です。ドコサとはギリシア語数詞で22を意味し、 ヘキサは6を意味し、最後の「エン」はカルボン酸 を構成する炭素原子と炭素原子の間に二重結合があることを示しています。すなわちドコサヘキサエン酸とは、6つの 不飽和結合を含んだ22の炭素からなるカルボン酸です。
また、DHAは血液中の中性脂肪値を下げる効果があるとして特定保健用食品にも使われています。

DHAで頭が良くなる?

次に、DHAを摂取すると頭が良くなるという説を裏づけるデータはあるのか見てみましょう。

社団法人 日本植物油協会の見解
『DHAで頭が良くなる』という説がありますが、これは「不足すれば脳の活動は低下するが、補給すれば元に回復する」ことです。 すなわち「持って生まれた知能レベルはDHAの投与で良くなるのではない」ということです。 この点は平成7年9月の日本脂質栄養学会で、高校生等を対象にした調査により確認された結果、「一般の高校生にDHAを補給しても学力の向上は見られなかった」と発表されています。(社団法人 日本植物油協会より)

つまり、DHAを摂取すると頭が良くなるという説は根拠がないと言えます。

DHAは不足しているのか?

次に、私たちの食生活におけるDHAの摂取量を見てみましょう。

国立健康・栄養研究所 生活習慣病研究部 江崎治氏の見解  
「1日に1−1.7グラムが適量だと言えます。日本人の平均摂取量は1グラムほどなので、魚を積極的に食べている人は、1日に1.7グラムは取っているでしょう」。 魚の種類には、特にこだわらなくてよい。また、毎日食べなくても構わない。 例えば、ブリ半切れで1.7グラム摂取できるので、1切れを食べれば、ほぼ2日分の摂取量に相当し、翌日は魚を食べなくてもいいわけです」。(表1参照)

「1日の適量摂取量が1−1.7グラムである」ことの根拠を知ることはできませんでした。

どんな食品にDHAが含まれているのか?

では、どんなものを食べればDHAを摂取できるのか。私たちが普段口にするもののDHA含有量を見てみましょう。

可食部100gあたりのDHA量
豚肉 脂身つき 焼き・ゆで 9〜12 mg
鶏肉 皮つき 焼き・ゆで 5〜7 mg
牛肉 生レバー 9 mg
だし巻きたまご 100 mg
卵黄 380 mg
カステラ 42 mg

表1:魚のDHA含有量 (あなたの健康百科 魚の適正摂取量は?より)
パンダ

注意点

中性脂肪値を下げるなど体にいいDHAですが、気を付けなければならない注意点もあります。DHAは、適切に用いれば安全だが、 大量摂取は危険性が示唆されています。1日3g以上の摂取で、凝血能が低下し出血傾向が起きることがあります。
(PMID:1840144)J Chromatogr. 1991 572: 1-9.

結論

今回の調査では、DHAと頭の良さとのつながりを見つけることはできませんでした。
また、DHAの平均摂取量の算出式と適量の判断基準は分かりませんでした。しかし、平均摂取量が正しいとすると、普通の食生活を送ればDHAの不足を心配する必要はないと言えます。
ひとつの栄養素が注目されると、その栄養素に偏った食生活に陥りがちです。”これさえ摂取すれば大丈夫”というような 魔法のような栄養素はありません。情報に踊らされることなく、バランスの取れた食生活を心がけましょう。

藤田コメント

 「魚を食べると頭がよくなるというのは迷信である」というのが、古高君 の判定ですね。
 どういうものを指して学力と呼ぶかがまず問題ですが、DHA(もしく は他の何であれ、ひとつの栄養素)が人の学業成績のようなものに意味の ある向上効果を与えることは考えにくいことなので、日本植物油協会の見 解は予想されたものです。しかし、DHAがニューロンの生存や機能にお よぼす影響、ラットなどの実験動物を用いて学習行動への効果を見たよう な研究もあるはずです。そのような研究の正当性の評価も行いたいもの です。何かポジティブに評価できる知見があるかも知れません。
 かつて私が中高校生の頃、高級脂肪酸を使用しているというサラダ油の コマーシャルがしきりに流れていました。高級脂肪酸の「高級」とは、炭素の数が多 いという化学用語に過ぎませんが、何か「高級な」原料からできているサラダ油の ように聞こえたものです。このような宣伝というのは、うそは含まれてい ないのですが、「ひっかけ」があるわけです。中学校の理科や高校の化学 をきちんと学べば、このようなひっかけにだまされることはないというこ とですね。
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