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血液型と性格は関係があるか?

よく耳にする血液型と性格の関係…でもそれって科学的に正しいことなんでしょうか??
大阪大学 基礎工学部システム科学科
生物工学コース 2年
井上裕哉
2009/03/27初出

はじめに

まず初めに、血液型とはいったい何なのか、まずそこから話を始めたいと思います。

血液型とは、血液中の血球に存在する抗原、抗体の種類によって分類された血液のタイプのことです。ぼくたちにとって一番身近であろうと思われるABO式の血液型は、赤血球中のAという抗原、Bという抗原(赤血球表面を覆う糖鎖の先に結合する糖の種類による)の有無によってO型(両方なし)、A型(Aのみを持つ)、B型(Bのみを持つ)、AB型(両方持つ)の4種類に分類したもので、1900年にオーストリアの生物学者カール・ラントシュタイナーによって発見されました。(ちなみに彼はこの発見により輸血の臨床的進歩に大きく貢献し、1930年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。)

輸血時に血液型が問題になるのは、自分の持っていない抗原に対しては抗体が体内で形成されてしまっているので、異なる型の血液が体内に入ると抗原と抗体が反応を起こし、ひどい場合にはショック死することもあるからです。

血液型赤血球中の抗原血液中の抗体
O型抗原なしA抗体、B抗体
A型A抗原B抗体
B型B抗原A抗体
AB型A抗原、B抗原抗体なし
表 1 血液型と抗原、抗体の関係

さて、ABO式の血液型について基本的なことはだいたいわかっていただけたかと思います。これを踏まえて、次に一体誰が血液型と性格の関連性を主張し始めたのかについて少し触れてみようと思います。

(参照:http://abo1.web.fc2.com/history/history.html


時は1916年(大正5年)。血液型の発見に大きく沸き、研究も盛んに行われていたヨーロッパ医学界、そんな中、当時医学の最先端とも言われたドイツに留学したこともある一人の医師がある論文を発表しました。この論文こそが日本で最初に血液型と性格の関係についてふれた論文であり、これを発表した医師は原来復(はらきまた)という人物です。この論文では確かに、血液型と性格の関連性についてふれてはいますが、特に断定的に肯定するような内容ではないということに注意していただきたいと思います。以下論文の一部。


類属ノ差異ニ依リ人ノ性質又其他ニ何カ得長ノ存在スルヤ否ヤニ就テハ未ダ全ク不明ナルモ。・・・Aノ方ハ柔順ニテ成積優等級ノ首席ヲ占ヌルニ、Bノ方ハ粗暴ニシテ級ノ最下等ノ成積ヲ有セリ、以上ノ如キハ恐ク偶然ノ事柄ナランモ、然レドモ特ニ斯ノ如キ點ニ就テ調査セバ興味多キコトト信ズ

(訳:どの種類(O,A,B,AB型のいずれか)に属するかによって、人の性質その他になにか特徴があるかどうかについては、まだ全く不明であるが、たとえば…Aの人は従順で成績優秀、首席を占めているのに、Bの方は粗暴で成績も最下等の方だった。このようなことは、おそらく偶然ということもあるだろうが、この点について調査することは興味深い。 )

原氏がこのような内容(特にA型が優れていてB型が劣っているということを示唆している点に注意していただきたいと思います。)を論文で述べた背景には、当時の、彼の留学先でもあったドイツで行われた研究による影響があったのではないでしょうか。というのも、当時ドイツではハイデンベルグ大学のガン研究所の教授だったE・フォン・デュンゲルン博士が動物の血液型を調べ、チンパンジーにはA型しかなく、他の動物にはB型が多いということを発見していました。つまり「高等な」動物はA型、「下等な」動物はB型という考え方が出てきて、それに加え当時の人種差別も相まって、(このような言い方は適切ではないかもしれませんが)高等な白人はA型で、下等な黄人や黒人はB型だという決め付けが行われたのだと思われます。

このように、そもそも血液型による人間の分類はもともと差別目的の何の根拠もないウソから始まったということになります。


日本での流れ。(血液型と性格の関係によるブーム)


その後、1927年お茶の水女子大学の古川竹二教授が初めて血液型と性格を関連づける研究を行いました。この古川説(表2参照)には当然批判も多く出ましたが、当時、金沢大学医学部の教授だった古畑種基博士と長崎医科大学の教授だった浅田一博士とともにラジオ放送などのメディアを使って古川説を広く世に宣伝し、この三教授によって戦前、血液型ブームが巻き起こりました。

O型利己的、自発的、理性的、意志が強い
A型他人につくす、控え目、多感、温厚
B型陽気、活動的、出しゃばり、根気がない
AB型外面的にはB型に類似、内面的にはA型に類似
表 2 古川竹二による分類
参照:http://www.xsunx.org/columns/7aa_love/KetsuekiGataSeikakuhandan_NazoRiyouhouhou.html

その後、時代の流れとともにブームは一度過ぎ去りました。現在のようなブームが巻き起こったのは戦後、1970年代に能見正比古という作家が古川説を「血液型人間学」として独自にまとめ上げ、ベストセラーとしたことに端を発するようです。

ここで注目していただきたいのが古川氏のデータの収集方法です。主な手法は、ABO式血液型別の質問項目をそれぞれ10項目程度ずつ作成し、血液型との一致率を測定するというもので、古川氏自身によると、自省表は80%以上の一致率があるとされました。またこれとは別に、職業別にABO式血液型を調査して、職業特性と比較したりしましたが、被験者の数は30人未満であり、統計的なデータではない、つまり信憑性のないインチキということになるのです。他にも血液型と性格との間に特殊な関連を設定した統計的な検証も行われてはいますが、そのような関連を裏付けるような統計データは得られてはいません。 科学的な根拠が存在しない仮説なのです。(Wikipedia/血液型性格分類参照)

結論

そもそも、最初に述べたように血液型とは血液中の抗原の有無によって決まるものであり、一般に知られているABO式の血液型以外にも様々な分類方法が存在します。(Rhなどは聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。)
仮に血液型(=抗原の有無)が人間の性格に何らかの大きな影響をもたらすとするならば、人間の血液中にはほかにも様々な抗原が存在するのであり、それらすべてに影響を受けるはずであり、ABO式だけによって性格が決定される(それが仮に大まかな分類であったとしても)という仮定がそもそも間違っているということになります。あるいは、ひとりひとりの抗原の組み合わせは異なるのだから同じように性格もひとりひとり異なり、まして血液型のみによって決まるなどあり得ないとも反論できるかもしれません。
いずれにせよ、血液型による性格分類が論理を欠いた学説であることは明らかで、曲学もいいところです。

性格とは育った環境や経験によって後天的に決定されるものであり、先天的に(遺伝によって)決定されている血液型とは別のものであることを理解していただきたく思います。

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