サル下側頭葉皮質における視差に基づく形の情報処理

田中宏喜、宇賀貴紀、吉山顕次、加藤誠、藤田一郎

1998年8月5日〜8月7日

視覚科学フォーラム 第2回研究会(岡崎国立共同研究機構コンファレンスセンター)

  両眼視差は、奥行き知覚の手がかりであると同時に、形を知覚する手がかりともなる。サル下側頭葉皮質において視差情報が伝達されていることが最近われわれの研究室で明らかにされたが、下側頭葉皮質が形態認識に重要な役割を果たしていることから、この領野が視差に基づく形の情報伝達に関与している可能性が考えられる。これを確かめるため、今回われわれは、両眼融合したときに、用意した8つの図形のいずれかが知覚されるランダムドットステレオグラム(RDSs)に対する、サル下側頭葉皮質の細胞の応答を検討した。注視課題中のサルの下側頭葉皮質から単一神経細胞外記録を行った。刺激ディスプレイを、まず形のみえないランダムドットパターン(プレパターン)で満たし、その後、中央の長方形領域内のドットパターンを変化させ、視差に基づく図形を2秒間呈示した。8つのRDSsの中の一つでもプレパターンと有意に異なった応答を示した細胞についてデータ解析を行ったところ、約14パーセントの細胞(11/79)で、RDSsに対する反応に選択性がみられた(Kryskal-Wallis検定、p<0.05)。方眼像のみを呈示した場合には、この反応選択性は失われたことから、この反応選択性は視差に基づく形を反映していると考えられる。さらに、これらの細胞の一群は、輝度やテクスチャーに基づく形刺激に対しても、類似した形選択性を示した。このことは、下側頭葉皮質細胞の一部は、手がかりによらない形の情報を伝達していることを示唆している。


Back