「一般像抽出原則」と三次元表面構造の脳内表現

平成9年度生理学研究所研究会
平成1018日―9日  生理学研究所1F会議室

 脳の情報処理の多くが、本来、答えが一意に定まらない問題(不良設定問題)の解決である。脳は、何らかの拘束条件を用いて解を定めている。脳の情報処理において、どんな拘束条件が用いられ、それがなぜ動物にとって適応的なのか、その拘束条件が物理世界の構造といかに整合的であるか、その拘束条件を組み込んだ計算アルゴリズムは何であり、脳はそれをどう実現しているのか、を問うことは、脳の高次機能メカニズムを調べる際の重要な視点である。
 ものを見ることも、その根本において、不良設定問題である。それは、脳が行っていることが、網膜2次元像から、世界の3次元構造を再構成することだからである。人は、2次元網膜像から3次元表面構造を復元する際に、「一般像抽出原則」に従う。十字の水平腕の両端に両眼視差をつけた時に重なり合う2本の棒を知覚したり、Redies-Spillmann図形にネオン色拡散を知覚することがその証拠とされている。われわれは、サルにおいても、これらの知覚現像が成立している心理物理学的証拠を得た。さらに、下側頭葉皮質細胞の中に、一般像抽出原則に従って形成された知覚に相関する活動を示す細胞を見いだした。


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