サル大脳皮質視覚連合野の機能構築

第1回成茂動物科学シンポジウム

「動物科学の発展---神経生物学の最先端」

1995年9月17日 東京都立大学

 「目の前にある物を見てそれが何であるかがわかる」---この日常的なできごとの舞台裏で脳は謎に満ちた情報処理を行っている。それは、物体の位置・見る角度と距離・照明条件などの変化に対象の認識が左右されないこと、身の回りの無数の物体を識別していることを考えると直感できる。網膜により捉えられた視空間局所の明暗と波長の情報は、脳で様々な処理を受け、最終的には、上記の特性に役に立つ形で神経細胞の活動として表現されているはずである。  

  サル大脳側頭葉視覚連合野の一つTE野は、物体認識に必要な皮質神経路の最終段階に位置する。この領域が破壊された動物は、物体の位置・運動の知覚や視覚誘導性の行動には影響を受けずに、物体の識別と再認ができなくなる。個々のTE野の細胞の性質を調べてみると、彼らは、物体そのものではなく、物体の部分的な図形特徴に応じている。TE野の中で、似た図形特徴に反応する細胞は皮質表面に対して垂直方向に並び、幅0.4-0.5ミリの円柱構造(コラム)を形成している。隣り合うコラムに含まれる細胞は全く異なった図形特徴に対して選択性を有し、TE野(背側部)には片側2000個のコラムが存在すると見積もられている。以上の結果は、物体像が、コラムに表出されている限られた数の要素的図形特徴に分解されており、物体像の特定は活動するコラムの組み合わせで表現されている可能性を示している。


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