サル下側頭葉皮質のコラム構造

藤田一郎
大阪大学医学部認知脳科学講座

 下側頭葉皮質TE野は、霊長類の大脳皮質において、物体が何であるかを見分けるのに必要な経路の最終段を占めており、この領域が破壊されると、視力や視感度さらには空間的な視知覚は影響を受けないものの、物体の識別・認識ができなくなる。TE野の視覚反応性を調べてみると、TE細胞は、物体の部分的特徴ともいえる特定の形、色、テクスチャー、陰影、それら属性の組み合わせに選択的に反応する。TE野の中で、似た図形特徴選択性を持つ細胞は皮質に垂直方向に並び、幅0.5ミリの柱状構造(コラム)を形成している。似た図形特徴に応答するコラムは複数、距離をおいて点在する。隣り合うコラムは異なった図形特徴に反応する。
 TE野には、皮質表面に平行な方向に走行する水平軸索のネットワークがある。水平軸索は、TE野の中を4−8ミリ走行し、その途中で、平均幅0.5ミリのコラム状の軸索終末の集団を形成する。このように機能的なコラムのサイズと水平軸索のコラム状終末集団のサイズは一致するが、機能的コラムと水平軸索の終末コラムの間の対応関係(たとえば、水平軸索は、似た図形選択性を持つコラムを結んでいるのか)は不明である。また、水平軸索の起始細胞のほとんどは錐体細胞であるが、TE野において、コラムの間のどのような相互作用を担っているかは明らかではない。水平軸索の機能と構造を明らかにすることは、「部分特徴に応答するコラムの活動がどう統合されて物体全体の知覚にいたるのか?「TE野細胞の刺激選択性や広い受容野形成はどう行われるか?」という問題の理解と深く関わっている。


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