聴覚による空間知覚

緒言

 メンフクロウの中脳下丘外側核(ICx)の神経細胞は、空間内の特定領域(受容野)から発した音にのみ反応する。しかも、これらの細胞は、 ICx の中で、その受容野の位置に従って配列している。すなわち、隣りあった受容野を持つ細胞は隣りあって分布しており、ICxの中に、聴覚空間の地図を形成している。網膜と違い、内耳には外界空間の像は投射されていないから、脳は音情報を処理することにより、受容野特性と聴覚地図を作りださなくてはならない。いかにして、脳がそれを達成しているかという問題は、脳の情報処理機構に関する重要な問題を多く含んでいる。
 メンフクロウは、両耳に入ってきてた音の時間差(ITD)から音源の水平位置を知り、垂直位置は両耳間の強度差(IID)から知る。したがって、上記の問いは、神経細胞がITDIIDをコードする機構を問うことに等しい。神経細胞が特定のITDに反応する性質ITD選択性)は、層状核(NL)で生じ、上位の核(下丘中心核ICcおよびICx)ほど鋭くなる。これらの神経核には、抑制性伝達物質であるガンマアミノ酪酸(GABA)を含む神経細胞と軸索終末が存在する。ここでは、GABAを介する抑制機構が、ITD情報の処理にどう寄与しているかという問題を中心に解説する。


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