「コイ嗅球僧帽細胞の抑制」
第14回味と匂のシンポジウム(東京) 1980.11.28-29

佐藤真彦1、藤田一郎2、市川真澄3、上田一夫4

(1・2・4東京大学理学部動物学教室、3東京都神経科学総合研究所)


コイ嗅球の誘発電位と僧帽細胞の細胞内電位の解析から・僧帽細胞の抑制には二つの経路がある事を示唆する結果を得たので報告する。顆粒細胞層で誘発電位を記録すると、外側嗅索刺激に対しては小さな陰牲波(C1)とそれに続く大きな陽性波(C2)が生じた。内側嗅索を刺激すると、C1・C2に続いて大きな陰性波(C4)が観察され、さらに頻回刺激によりC2の直後に促通を示す陰性波(C3)が出現した。C1は逆
行性に興奮した僧帽細胞からの複合活動電位である事がすでに判明している。さて誘発電位の層分析を行なうと、C2・C3・C4は僧帽細胞層を境に極性が逆転した。また終脳からの遠心性線維を変性させると、C2・C3・C4だけが消失した。これらの結果から、C2は、逆行性に興奮した僧帽細胞から樹状突起間シナプスを通してひきおこされた、顆粒細胞樹状突起の僧帽細胞層より浅い層における脱分極、C3・C4は内側嗅
索を通る遠心性線維によりひきおこされた、顆粒細胞樹状突起の深い層での脱分極を反映していると考えられる。
僧帽細胞の応答を細胞内記録すると逆行性スパイクと共にIPSPが観察されるが、内側嗅索刺激に対しては時間経過及び閾値がC2・C3に対応する成分とC4に対応する成分からなる二段のIPSPが生じた。また内側嗅索頻回刺激により、C3に対応して促通を起こすIPSP成分が見られた。遠心性線維を変性させると、C3・C4に対応する成分は消失するが、C2に対応する成分は残った。以上の結果から、僧帽細胞は嗅索刺激により、顆粒細胞との間の相反性シナプスを介しての抑制と遠心性線維による顆粒細胞の賦活を介しての抑制を受ける事が推定される。