2015日本眼科学会シンポジウム抄録

 

演題名:

両眼立体視の神経機構:両眼視差検出から奥行き知覚成立まで

Neural mechanism of stereopsis: from binocular disparity to depth perception

 

抄録本文:

 両目で見る世界は、片目では得ることのできない立体感を持つ。この知覚は、右目に映る像と左目に映る像のほんのわずかな位置ずれ(両眼視差)に基づいて、脳が視覚対象の奥行きを計算していることによる。両眼視差は一次視覚野(V1で算出される。しかし、V1細胞の活動がそのまま奥行き知覚に結びつくのではなく、V1野以後の視覚野が必要である。従来、両眼視差情報は、V1野以後、頭頂葉に至る経路で処理されると考えられてきたが、近年の研究により、V4野や下側頭葉皮質IT野など側頭葉の領野も関わることが判明した。ヒトやサルが持つ非常に鋭敏な立体視能力(微小奥行き知覚)は複数の視覚対象の間の相対視差を検出することで実現する。V1野で検出した絶対視差から相対視差を算出する過程はV2野で始まりV4野で進展する。V4野の神経活動は微小奥行き判断に直接的に貢献する。視覚世界の立体構造を脳内で再構成するには、右目像と左目像を正しく対応づけなくてはならない(両眼対応問題)。V4野、IT野へと情報処理が進むにつれて両眼対応問題は解決されていく。頭頂葉経路の前部頭頂間溝領域でも両眼対応問題は解決されている。両眼立体視の障害は多くの場合、目の問題として捉えられているが、上記のように両眼立体視に関わる処理は広範な大脳皮質で行われており、立体視障害の中には視覚野の機能不全や損傷に起因するものも含まれているはずである。