人間行動進化学研究会 第7回研究発表会(京都) 2005.12.10-11

「2つの目、脳、そして立体視」

藤田一郎(大阪大学大学院生命機能研究科)

片目で見る世界も十分に3次元的に感じられるが、閉じていた目を開けた瞬間、それまでになかったビビッドな奥行き感が生まれる。これは、水平方向に離れた2つの目が異なった角度から世界を見ることに起因する左右網膜像のわずかな位置ずれ(両眼視差)を脳が利用して、奥行きに換算しているからである。この能力(両眼立体視)は、哺乳類においては、遠い昔、食虫類が、巧みにカモフラージュして捕食を逃れている昆虫のカモフラージュを見破る機能として生まれたと考えられている。両眼視差の脳内情報処理は、一次視覚野から頭頂葉にいたる経路でなされていると長く信じられてきたが、われわれはこの数年の研究で、一次視覚野から側頭葉にいたる経路でも行われていることを発見した。この2経路はどのように機能的分担をしているのか、どのように進化してきたのかに関するわれわれの仮説を紹介する。