生理研研究会 「視知覚への多角的アプローチ−生理、心理物理、計算論2」(岡崎)2005.6.23

A conundrum of stereoscopic mechanism
藤田一郎(大阪大学大学院生命機能研究科)

 両眼視差はV1で検出される。しかし、V1細胞の性質はいくつかの点で両眼奥行き知覚の性質と食い違っており、両眼奥行き知覚の成立にはV1以後の視覚領野の活動が必要と考えられる。では、どの視覚領野が両眼奥行き知覚の形成に関与しているのだろうか。choice probability解析や電気刺激実験による強力な証拠がそろっているMTが最有力候補だが、別の実験は、MT細胞が両眼対応点問題を解決していないことを示している。V4やITが両眼対応点問題を解決しているという証拠が出るに伴い、MT細胞のこのふるまいは大きな謎となってきた(「両眼対応点問題を解かずに両眼立体視に関与するということはあり得るのか?」)。われわれは最近、心理物理実験と拡張視差エネルギーモデルの解析から、V1細胞による両眼視差エネルギー計算の出力が粗い奥行き知覚を担うものの、奥行き面の知覚を伴わないことを示唆する結果を得た。この結果に基づいて、多くの生理学的知見を整合的に説明する両眼立体視メカニズムに関するわれわれの仮説を紹介する。