2つの目で見る世界:両眼視差の算出から奥行き知覚の形成における大脳側頭葉の役割

第58回日本臨床眼科学会 平成16年11月11日〜14日
大阪大学大学院生命機能研究科 藤田一郎


2つの目は水平方向にずれており、それぞれの目はわずかに異なった世界を見ている。そして、2つの網膜に投影された光学像に基づいて、脳は眼前の世界の3次元構造を復元する。その際に使われている視覚的手がかりは、2つの網膜像の問に生じるわずかな位置ずれ(両眼視差)である。脳が両眼視差をどのように検出し、どのような変換を施し、最終的に奥行きの知覚にいたるのかという問題は、多くの脳科学者を魅了してきた。両眼視差は、2つの眼由来の情報が初めて単一ニューロンに収瞼する一次視覚野において検出される。今日では、その検出メ力ニズムはかなりの精度で理解されている。しかし、奥行きを知覚し、物体の3次元面構造を知るには、両眼視差が抽出された後にも多くの情報処理が必要である。従来、そのような情報処理は一次視覚野から頭頂葉に至る経路でなされていると考えられてきた。しかし、最近、われわれを含む複数の研究グループは、側頭葉においても両眼視差情報が処理されていることを明らかにした。本講演では、「頭頂葉と側頭葉では、両眼立体視において、どのような機能分担がなされているのか。」「頭頂葉や側頭葉の両眼視差感受性ニューロンは本当に奥行きの知覚に関与しているのか。」という問題をとりあげ、「側頭葉経路のニューロンは、複数の視覚対象の間の相対的視差を情報として伝えておリ、細かな奥行き弁別に貢献している」というわれわれの主張を議論する。



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