視覚系の行動学的理解

藤田一郎

大阪大学大学院基礎工学研究科

fujita@bpe.es.osaka-u.ac.jp

http://www2.bpe.es.osaka-u.ac.jp/Fujita-labo/web/index_e.htm

 

 脳が「何を計算・処理しているか」をニューロンに問うのではなく、動物・ヒトに問い、「何を計算・処理しているか」が明らかになった上で、それが「どのように計算・処理されているか」をニューロンに問う戦略は、認知と行動のメカニズムを追う上で有効である。

 われわれは、神経行動学(Neuroethology)におけるテネットとも言えるこの戦略と、「脳が行っている情報処理の多くの側面が、不良設定問題(そのままでは、解を一つに定めることのできない問題)の解決である」という計算論的神経科学からの洞察に基づいて、霊長類視覚系における面構造の復元過程の解析を開始した。網膜2次元像から3次元物体の面構造を復元する過程は、典型的な不良設定問題であり、その過程で、ヒトは、一般像抽出原則(Nakayama & Shimojo, 1992)と呼ばれる心理法則に沿って面を知覚する。サルもヒトと同様に面の知覚を行っていることをまず行動実験により示した上で、その面構造を表出している細胞を探索した。その結果、腹側視覚経路の終点である下側頭葉皮質に、両眼視差情報が到達しており、その一部の細胞が、形と視差の両方を統合した上で、面の奥行き構造を伝えていることを見いだした。


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